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新しく診断を受けた患者さん、家族へ

早期に専門医に相談するために

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)

DMDとは

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、乳幼児期に発症し、徐々に筋肉が弱っていくことで、全身の機能を障害する疾患です。そのため運動が上手くできなくなるほか、 合併症によってさまざまな臓器の働きが正常に行われなくなります。
また、国から指定難病の一つに定められています。
筋ジストロフィー(指定難病113) - 難病情報センター (nanbyou.or.jp)

現在、DMD対する根本的な治療法は確立されていませんが、診断時から継続的に専門的な治療を受けることが重要です。現時点では薬物療法、リハビリテーション(関節拘縮(かんせつこうしゅく)予防、運動機能維持など)のほか、合併症や筋ジストロフィーの種類に応じた対症療法が行われます。ただし、近年の医療の進歩から一部の筋ジストロフィーでは新しい治療法や薬が開発されているほか、そのほかの新しい薬の研究開発も盛んに行われています。

早期に専門医に相談するために

乳幼児期は、ほとんど症状がみられず、首のすわりや歩行の開始がやや遅れることがあります。この時期の遅れは、しばしば見過ごされてしまします。
しかし、ご家族にDMDの病歴がある場合や、何かの理由で血液検査を行った結果DMDが疑われることがすくなくありません。
子供の発達の遅れに最初に気が付くのはご家族であることが多く、気になる症状や発達の遅れなどが心配な場合は、かかりつけ医に相談しましょう。

~小学校に入るまでに親御さんが気になること~
  • ジャンプができない
  • 走れない
  • アヒルのように腰を振った歩き方をする(動揺性歩行)
  • よく転ぶ(何かに引っかかるわけでもなく膝が折れたように転ぶ)
  • 床から立ち上がる際に、手やひざや太ももをつかみながら体を起こす
    ガワーズ徴候を示す子どもの動作を順に描いたイラスト。床に手をついて四つ這いの姿勢から、徐々に手を膝に当てて体を支えながら起き上がり、最後は腰に手を当てて直立しています。
    立ち上がるとき(ガワーズ徴候:登攀(とうはん)性起立)
  • ふくらはぎが太く、硬くなる(筋肥大)
    後ろ向きの下半身のイラストで、矢印と「このあたりがふくらはぎです」という文字により、ふくらはぎの位置を示しています。
    ふくらはぎの位置
  • 歩くときにかかとをつけることができず、つま先立ちになる
  • 血液検査でクレアチンキナーゼ(CK), AST, ALTの3つの値が非常に高い
専門医へ受診しましょう。
  1. 血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)AST,ALTの3つの値が高ということは、 筋肉が壊れているサインとなります。
  2. 遺伝子の検査は、検査を受ける前に、受けるかどうかについて、十分に検討していただく必要があります。普通の検査とちがって、何度行なっても検査の結果は変わりません。検査結果は、検査を受けた人ばかりでなく、ご家族にも関わる可能性がありますので、遺伝カウンセリングを踏まえて検査に臨んでいただくことをお勧めします。
    詳しくは神経筋ポータルサイトお役立ち情報「遺伝のはなし」をご覧ください。
    遺伝子検査の際には、遺伝子が関係する病気や遺伝に関連する不安や心配ごとなどについて、医師や遺伝カウンセラーに相談ください。
DMDの確定診断

DMDの確定診断は、多くの場合は専門医がいる病院で行われます。
以下の症状と検査結果をあわせて診断されます。

医師に日頃の様子で気になることを伝えてください。
  • 歩き始めが遅かった
  • 転びやすい・走れない・ジャンプができない
  • 立ちあがるとき膝に手をつきながら起き上がる
  • 歩くとき体が左右にゆれている
  • ふくらはぎの筋肉が固く張っている
  • 血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)、AST,ALTの値が高いと言われた など
血液検査をします。

血液検査項目は、クレアチンキナーゼ(CK)AST,ALTの3つに注目します。
この3つに注目するのは、これらの値が高い場合は、筋肉が壊れているサインとなるため、筋肉が壊れやすい病気にかかっている可能性が高いと思われるからです。

血液検査の必須項目 正常範囲
AST 13-30  U/L
ALT 10-42  U/L
血清CK 59~248 U/L

検査値の正常範囲です。(値は病院によって多少の違いがあります。)
DMDの場合は、正常の50倍以上の高い値を示します。
血清CKは、10000U/Lを超える値となります。DMDが疑われる場合には、確定診断のために、遺伝子検査を受けることが推奨されています。
遺伝子検査の方法は、MLPA法と塩基配列解析法(シークエンス法)と2つ方法があり、DMDが疑われる場合、この2つの遺伝子検査は、保険診療適用となります。

遺伝子検査について

DMDは、遺伝子の変化(遺伝子バリアントとも呼ばれます)が原因で生じる病気です。遺伝子検査で、ジストロフィン遺伝子バリアントの有無、遺伝子バリアントの種類などを調べます。遺伝子の変化の状態を調べることは、診断を確定することだけでなく、今後の治療方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査を受ける前に

受けるかどうかについて、十分に検討していただく必要があります。
それは遺伝子の検査結果は、検査を受けたご本人ばかりでなく、ご家族にも関わる可能性があるためです。検査結果をどのように解釈し、患者さんご家族にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを知っていただくために、遺伝カウンセリングを受けていただくことが必要です。遺伝子結果が関係する病気や遺伝に関連する不安や心配ごとなどのご相談をご希望される場合は、主治医や医療機関の窓口にご連絡ください。

筋生検

最近は、遺伝子検査で確定診断が得られることが大半であり、ご本人への負担が大きい検査であるため、あまり行われていません。筋生検は、遺伝子検査でジストロフィン遺伝子のバリアントを確認できないときに行います。筋細胞の内にあるジストロフィンタンパク質の量や状態を知ることで診断の一助にします。
筋生検は、全身または局所麻酔下で、筋肉の一部を採取します。その際は、短期間の入院をしていただきます。

診断までの流れ
DMD/BMDの診断の流れを示すフローチャート。最上部に『臨床症状、身体・検査所見からDMD/BMDの疑い』とあり、その下に点線枠で『検査前遺伝カウンセリング』。続いて『ジストロフィン遺伝子MLPA法(保険適用)』の箱に進む。MLPA法で変異ありの場合は右側の矢印で直接赤い背景の『DMD/BMD確定診断』へ。変異なしの場合は下へ矢印が伸び、『ジストロフィン遺伝子シーケンス法(保険適用)』に移行。シーケンス法で異常ありは確定診断へ、異常なしはさらに下の『筋生検』へ。シーケンス法の箱からは必要に応じて右下の破線矢印で『染色体検査』にも分岐し、染色体検査で異常ありの場合は点線枠の『検査後遺伝子カウンセリング』を経て確定診断に至る。最終的にすべての経路が『DMD/BMD確定診断』に結ばれている。
DMD/BMDの診断の流れ