DMD デュシェンヌ型筋ジストロフィー
DMD デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは
- ジストロフィン遺伝子に変化(変異)が原因です。
乳幼児期に発症し、5-6歳頃に運動機能のピークを迎え、その後はゆっくりと進行します。
- 根本的な治療法はありませんが、臨床開発(くすりを作るための研究開発)が非常に活発に行われています。あきらめることなく現在提供できる最善の医療を受けていくことが重要です。
DMDの原因
- X染色体に存在するジストロフィン遺伝子の変化(変異)が原因で、X連鎖潜性遺伝の形式をとります。
- ジストロフィン遺伝子はジストロフィン蛋白を作るために必要な設計図です。
- ジストロフィンは筋細胞膜の直下に存在し筋細胞膜を裏打ちしており細胞膜の安定化に貢献していると考えられています。
- ジストロフィン蛋白が欠損することで筋細胞膜が不安定になり壊れやすくなると考えられています。
- DMDとBMDは同じ原因ですが、BMDの方が発症時期や進行がより遅いです。
- DMDとBMDの症状の違いは、遺伝子変異のパターンによって多くは説明可能です。
DMDの経過
- 乳幼児期に発症し、5-6歳頃に運動機能のピークを迎え、その後はゆっくりと運動機能が低下します。
- 日本では別な目的で採血を行った際に高CK(クレアチンキナーゼ)血症がみつかったことから症状のない時期に診断を受ける場合も多いです。
昔は10歳までに歩行が不能となる場合が多かったのですが、治療の進歩によって歩行できる期間は着実に伸びています。
- 呼吸筋や心筋にも障害がいずれ及んできます。
- 進行する場合にはゆっくりですので、症状が出現しにくいので定期的な検査を行っていく必要があります。
DMDの主な症状
- 筋力低下
- 呼吸障害
- 心筋障害、不整脈
- 摂食嚥下障害
- 脊柱側弯症
- 関節拘縮
- 知的障害、
自閉スペクトラム症 - 強迫症状
DMDのケア・治療
- 根本的な治療法は確立されていません。
- ガイドラインが定められており、それに沿った適切な医療を診断時から受けていくことが重要です。
- 薬物治療としてステロイド治療の有効性が示されています。医師とよく相談し、ステロイド治療の目的、開始時期、副作用に関する情報、副作用予防対策などの情報をしっかり得たうえで治療を検討してください。
- 日本ではエクソン53を標的としたエクソン・スキッピング治療を受けることができますが、遺伝子変異によって決まってくる方法です。DMD患者の10%程度が適応になります。
- 心筋症もいずれ生じてきますが、その時期は患者さんによって異なります。少なくとも8歳以降は心臓超音波検査を中心とした検査を定期的に受けるようにしましょう。
- 心機能が低下してきた時期、もしくは10歳を目途に心保護治療のため内服治療を開始します。
- 運動が誘因となる筋肉痛を生じる場合があり、筋肉痛が強く出現し、生活の支障となる場合があります。経験的にダントリウムという薬物治療が有効な場合があります。
- 冬になると筋肉量や運動量が少ないことから末梢循環障害が問題となる場合も少なくありません。保温対策を講じるとともにビタミンEの内服が有効な場合があります。
- いくつかの要因から骨粗しょう症も問題となり、ちょっとした外傷、転倒がきっかけで骨折を生じる場合があります。無理しすぎない、移動・移乗の場合に慌てない、適度な運動を心がける、カルシウム摂取を意識した食事を心がける、日光浴を意識する(日光浴によって骨の健康を維持するために重要なビタミンDが合成されます)などの生活環境を心がけるとともに、ビタミンDの内服、ビスフォスフォネートという骨粗しょう症薬の投与を行う場合もあります。
- 飲み込む力が弱くなると、経管栄養または胃ろうを行う場合もあります
DMDのリハビリテーション
呼吸療法
肺活量(VC)や咳嗽力(咳の力のことでCPFともいう)などの呼吸機能の定期的な評価を行います。
- 肺の柔軟性を維持するために、呼吸機能の低下がみられる前から「息とめ」や「深呼吸」の練習を始めます。
呼吸機能が低下(肺活量2000ml以下)してきたら、アンビューバックを使用して、自分で息を吸う量よりも多くの空気を強制的に肺に送り込んで、肺の柔軟性を維持するトレーニング(MICという)を開始します。
- 肺活量だけでなく咳嗽力の低下がみられたら、介助者による徒手的咳介助や機械的咳介助(MAC)を使用します。CPF160l/min以下の人には日常管理、270l/min以下の人には排痰困難時にMACを使用します。
- 神経筋疾患の慢性呼吸不全による換気不全は一般に夜間から始まります。夜間の呼吸機能の検査と肺活量やCPFの数値を参考に、非侵襲的換気療法(NPPV)という気管切開をしない呼吸器の導入が決定されます。
補装具(車いす・下肢装具)
- 公費(補装具支給制度という、日常生活を送るうえで必要な、損なわれた身体機能を補完・代替する用具を購入・修理する費用を支給する制度のこと)で費用の給付を受けるためには身体障害者手帳が必要です。
- 申請窓口は各市町村の役所です。
- 作成のための申請は18歳以下の場合、各市町村への書類提出で可能です。18歳以降は身体障害者更生相談所へ判定に行き、支給決定を受けます。
- 補装具支給制度を利用した場合の自己負担額は、原則1割です。(※利用者負担上限月額は、生活保護・低所得者は0円、その他は37,200円)
- 補装具支給制度を利用した場合の耐用年数は基本6年です。(※成長や身体状況の変化等で身体に合わなくなった場合、修理困難なくらいに破損してしまった場合、災害など本人の責任によらない事情により壊れたりなくなったりした場合などは再支給が可能です)
- それ以外に、購入やレンタルという方法もあります。
申請から完成までの流れ(18歳以下)
- 小児神経科およびリハビリテーション科の医師に相談
- リハビリスタッフとの相談
- 各市区町村窓口で作成の相談、指定の書式と必要書類の確認
- 業者に見積作成を依頼、指定医師による意見書作成
- 書類が揃ったら本人や家族が市区町村窓口に申請
- 身体障害者更生相談所の判定・支給決定
- 支給決定が患者と業者に連絡される(補装具費支給決定書・補装具支給券を市区町村から受け取る)
- 病院リハビリでの車いす診察で仮合わせ
- 完成・納品(納品時に補装具支給券を業者に渡す)
装具療法
- 筋力低下によっておこる関節拘縮を最小限に抑えて、可能な限り動作の機能を維持するのが目的です。
- 尖足や偏平足による足の変形を予防するために、幼児期からインソールを導入し、立位・歩行時の足関節の動きをサポートする治療靴を使うことによって、ふくらはぎへの負担を減らすことができます。
- 歩くことが難しくなってきた時期に、長下肢装具と起立台(または立位保持装置付きの電動車いす)を導入して、心肺機能に負担のない範囲で立位の練習を続けます。
- また、脊柱の変形を予防するためには、楽な良い姿勢で座ることが大切です。
- 車椅子導入前の小学校低学年では、授業中に座位椅子を使います。自治体によって異なりますが、「日常生活用具」の「訓練椅子」という項目で補助を申請することが可能な場合もあります。
参考情報
生活のQ&A(外部リンク|国立精神・神経医療研究センター身体リハビリテーション部)
https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/reha-MD.html
国立精神・神経医療研究センターには幼児期から定期的に多くのデュシェンヌDMDの方が通院されています。これまで蓄積してきた情報を、いくつかのテーマに分けてまとめる取り組みをしています。DMDを知る(外部リンク|日本新薬株式会社)
https://www.nippon-shinyaku.co.jp/healthy/dmd/デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者さんのご家族のためのガイド(外部リンク|日本新薬株式会社|PDF)
https://www.nippon-shinyaku.co.jp/healthy/dmd/common/pdf/guide.pdf
DMDは診断時から継続して適切なケアを受けていくことが重要です。本ガイドは必要なケアの全体像について解説しています。主にDMDと診断された患者さんのご家族に参考にしていただけますと幸いです。
※本ガイドは、必ず医師からの医学的な説明や指導の下でご利用ください患者登録(レジストリ)
Remudy(外部リンク)
https://remudy.ncnp.go.jp/患者会
日本筋ジストロフィー協会(外部リンク)
https://www.jmda.or.jp/研究班
- 精神・神経疾患研究開発費
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究」(外部リンク) https://mdcst.jp/aboutus/