遺伝のはなし
染色体、DNA、遺伝子とは
私たちの体は、たくさんの細胞でできています。細胞には核があり、その中に「染色体」というひも状のかたまりが入っています。染色体は大きい順に1番から22番まで番号がついており、それぞれ父、母から1本ずつもらって2本で1セットになっています。これを「常染色体」といい、男性も女性も共通してもっています。このほかに性別を決める染色体である「性染色体」があり、男性はXとY、女性はXを2本もっています。染色体を拡大すると、2本のひもがらせん状にからまった形をしており、これを「DNA」と呼びます。DNAの中には、体の設計図になる情報の区切りが入っており、これを「遺伝子」と呼んでいます。私たちは、2万種類以上の遺伝子を持っています。遺伝子は、T・C・A・Gという4種類の文字(塩基)が順番に並んでできています。
遺伝子の塩基の変化(変異)で発症する病気のことを、「単一遺伝子病」と呼びます。
顕性(優性)と潜性(劣性)
遺伝子の変化の伝わり方には、大きく分けて2種類あります。父と母から伝わる2つの遺伝子のうち、1つの遺伝子に変化があると症状が出る場合を「顕性(優性)」、2つの遺伝子に変化があると症状が出る場合を「潜性(劣性)」と呼びます。潜性(劣性)の場合、片方の遺伝子に変化があっても症状は出ませんが、この状態を「保因者」と呼びます。
常染色体顕性(優性)遺伝
常染色体上にある1つの遺伝子の変化で病気が起こります。男女差はありません。患者の変化が子どもに伝わる可能性は1/2(50%)です。患者の遺伝子の変化が突然変異の場合は、変化が患者のきょうだいにある可能性は一般と同じです。
常染色体潜性(劣性)遺伝
常染色体上にある2つの遺伝子の変化がそろった場合に病気が起こります。男女差はありません。患者の両親は1つの遺伝子変異をもつ保因者である可能性が高いです。患者のきょうだいが病気である確率は1/4(25%)、保因者である確率は1/2(50%)になります。
X連鎖顕性(優性)遺伝
X染色体上にある1つの遺伝子の変化で病気が起こります。男女とも症状をもちますが、一般的に男性の方が重症になり、生まれてこないこともあります。男性が病気の場合、自分の子どもの女性は全員病気、男性は全員健康です。女性が病気の場合、自分の子どもの男性・女性とも1/2(50%)が病気です。患者の遺伝子の変化が突然変異の場合は、変化が患者のきょうだいにある可能性は一般と同じです。
X連鎖潜性(劣性)遺伝
X染色体は、男性は1本、女性は2本もっています。X染色体上にある遺伝子の変化により、1つしかもたない男性に病気が起こり、2つもつ女性(1つの遺伝子に変化があるがもう1つの遺伝子は正常=保因者)では症状が起こらない、あるいは男性より症状が目立たないことがほとんどです。男性が病気の場合、自分の子どもの女性は全員保因者、男性は全員健康です。女性が保因者の場合、自分の子どもの男性の1/2(50%)が病気、女性の1/2(50%)が保因者です。患者の遺伝子の変化が突然変異の場合は、変化が患者のきょうだいにある可能性は一般と同じです。