FSHD 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
FSHD 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーとは
- 他の筋ジストロフィーと異なり、顔面筋罹患(目を閉じたり、口をつぼめる筋力が弱い)、上肢を持ち上げることができなくなることが最初の症状であることが多いです。
- 根本的な治療法はありませんが、臨床開発(くすりを作るための研究開発)が進み始めています。あきらめることなく現在提供できる最善の医療を受けていくことが重要です。
FSHDの原因
- 4番染色体の端の4q35-qterという場所には、D4Z4とよばれる3.3kbの繰り返し配列が存在し、通常この繰り返し配列の数は11~100個以上なのですが、FSHDの場合には10個以下と減少していることが原因で、常染色体顕性遺伝 の形式をとります。
- この繰り返し配列の減少によって通常発現していないDUX4遺伝子が発現するようになることが原因と考えられています。
FSHDの経過
- 最初の症状は顔面筋罹患(表情が乏しい、麺をうまくすすれないなど)、上肢の挙上困難、翼状肩甲(肩甲骨の内側が浮いたようになり、折り畳んだ鳥の羽根のように見える症状)、上肢の筋力低下を主訴とする場合が多いです。
- 20歳までに発症することが多いですが、幼児期から壮年期まで幅があり、壮年期になっても軽度の顔面筋罹患のみの場合もあります。
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症状の進行はゆっくりですが、徐々に下肢にも障害は及び、成人になって車椅子生活になる場合もあります。
- 呼吸機能は最初の頃は問題ありませんが経過とともに問題が出現する場合もあります。
- 心臓合併症は他の筋ジストロフィーと比較するとない場合が多いです。
- 小児期に発症する場合には、知的障害、てんかん、難聴を合併する場合もあります。
FSHDの主な症状
- 筋力低下
- 呼吸障害
- 脊柱側弯症(前弯(ぜんわん)といって前方に曲がる場合が多い)
- 知的障害、てんかん(小児期に発症する場合)
- 難聴(小児期に発症する場合)
FSHDのケア・治療
- 根本的な治療法は確立されておらず、対症療法が中心です。
- 肩周囲の筋力が弱く、そのため肩付近の筋肉痛、重い肩こりのような症状を訴える場合があります。その場合PC作業時などにはアームレスト(肘置き)を使うと楽になる場合が多いです。
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呼吸筋の筋力低下や筋や胸郭が固くなることによって呼吸障害を合併する場合があります。その場合には胸郭と横隔膜の動きが早期から低下している場合が多いため、肺、胸郭のコンプライアンス(しなやかさ)を維持するためのリハビリテーションを導入します。
- 夜間のモニタリングデータなどを参考に、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の導入を検討します。
FSHDのリハビリテーション
- 顔面、頚部、肩甲帯の筋力が左右非対称性に低下し、症状が進行すると車椅子が必要となります(40歳頃のことが多いです)。
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日常生活の動作で過用性の筋力低下を避けることが大切です。
- 姿勢の歪みを予防するために良好な座位姿勢を保つよう工夫します。
- 必要であれば頭部を保持するための装具を作成します。
- 顔面筋の筋力が低下すると下唇が突出し、口を閉じることが難しくなります。
- 発声は比較的明瞭に維持できますが、表情が乏しくなってしまいます。
- 一般に中枢神経症状を認めないため、装具と福祉機器を適切に利用して就学・就労を続ける患者さんもみられます。
患者登録(レジストリ)
Remudy(外部リンク)
https://remudy.ncnp.go.jp/患者会
日本筋ジストロフィー協会(外部リンク)
https://www.jmda.or.jp/日本筋ジストロフィー協会 FSHD分科会(外部リンク)
https://www.fshd-jp.org/FSHD分科会Facebookページ(外部リンク)
https://www.facebook.com/FSHDinfoFSHD分科会X(旧twitter)アカウント(外部リンク)
https://twitter.com/FSHD_Japan研究班
- 精神・神経疾患研究開発費
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究」(外部リンク)
https://mdcst.jp/aboutus/